インスリン注射はいらない?糖尿病治療のお話

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こんな本を読みました。

北海道で内科クリニックを開いている岡本卓 先生の本です。岡本先生は東大医学部卒業後、ハーバード大学や米財団研究所、オハイオ州立大学等で研究・勤務されていた先生です。

この本では主にインスリン注射をしているⅡ型糖尿病患者さんに対して書かれているように見受けられます。もちろん予備軍や、今は健康という方も読んでおいて損はない本です。下記にこの本の概要をまとめてみたいと思います。

Ⅱ型糖尿病にインスリン注射は不要!?

岡本先生は、Ⅱ型糖尿病の患者さんの治療には飲み薬+生活習慣の改善が理想であるとし、インスリン注射は避けるべきだと主張しています。ただし、インスリン分泌量が少ないⅠ型患者さんや緊急時の対処では注射を使うことを否定していません。

なぜ注射を避けるべきなのか

量を間違えて打つと死ぬから

日常生活でインスリン注射をするとなると、本人か家族しか打つことができません。また、インスリンはホルモンの一種で安全に見えますが過剰投与する死ぬ(=量を間違えて注射すると危ない)危険があります。なので安易に注射をするのは避けるべきなのです。

日常生活に支障がでるから

もしも働きながら注射をするのであれば、あらぬ誤解を受けぬため人目を避けて注射をしたいもの。そうなると注射の度にトイレなどに隠れて打つしかありません。また、注射後は血糖値が下がりすぎるため急いで何かを食べないといけません。

そうなると日常生活は「注射」で大きく制限され、外出や旅行もしにくくなります。注射を打つ自分に自己嫌悪してしまい、”ウツ”になってしまうケースもあるそうです。

日本の血糖値基準に疑問が遺るから

そもそも、日本の糖尿病治療で採用している血糖値の基準値が正しくない可能性があります。

例えばヘモグロビンA1c(HbA1c)」という値は血糖値の一種で、過去1-2ヶ月の平均的な血糖状態を表します。この数値は「健康な人(非糖尿病):5.8%以下」で、糖尿病患者は「6.4%以下」が良好とされ、この数値にそって血糖値コントロールが行われています。

ところが2010年に英・ランセット誌(世界でも有名な医学誌)のなかで「Ⅱ型糖尿の場合、数値が7.1%の患者が一番死亡率が低い(注)」という発表がありました。7.1%よりも低い数値にすると、逆に死亡率が高くなります。

これが正しいとなると、「6.4%」という数値を目指すと逆に体に悪いということになるのです。

(注)
原文では7.1%ではなく「7.5%」と書かれていますが、これは海外と日本による数値算出方法の違いによります。なので日本基準に照らすと「7.1%」となるそうです。なお原文は下記参照のこと↓

Survival as a function of HbA1c in people with type 2 diabetes: a retrospective cohort study」Dr Craig J Currie 他

病院の利益だけで注射をすすめている可能性があるから

インスリン注射は病院にとって儲かるらしく注射指導だけで一人8200円(月)が病院に入るんだそうです。そのため、残念ながら病院の利益のために不要な注射をすすめているケースもあるのではないかということです。

だったらどうすれば良いのか

岡本先生はこう考える

以上に述べた「注射のデメリット」から、岡本先生は糖尿病患者さんを下記のように治療しています。

まずは現状把握

糖尿病で来院された患者さんにはまず「Cペプチド検査」を受けてもらいます。この検査で、実際に膵臓が分泌しているインスリン量が測定できます。本来、糖尿病の患者さんにはこの検査を真っ先にうけてもらうべきものですが、(なぜか)検査をしないお医者さんもいるそうです・・・。

分泌量を確認し、問題がなければ「インスリン量を増やす」注射はしません。代わりに「インスリンの効きを良くする」治療を開始します。具体的には飲み薬+生活習慣の改善です。

インスリンが働かない理由

Ⅱ型の患者さんの多くは「インスリンは充分でてるけど、ちゃんと働いてないよね(=インスリン抵抗性がある)」という人です。

なぜ働いていないのか?の理由はいくつかあるのですが、そのひとつが「脂肪細胞が邪魔しているから」です。

食べ過ぎると、体の中の脂肪(特に内臓脂肪)が蓄積し、大きく肥大します。肥大した脂肪は「TNFα」「PAI-1」という物質を出します。この物質がインスリンの働きを邪魔するので高血糖になるのです。

そのため「インスリンの働きを邪魔する奴をジャマする」薬を飲みます(飲み薬には幾つかありますが「ピオグリタゾン」というものが一番効果が良く安全性が高いそうです)。

飲み薬で”邪魔をジャマ”して高血糖を抑えつつ、真の悪玉「肥大した脂肪細胞」を減らすべく、食事療法や運動を行っていきます。

ちなみに、岡本先生は「厳格な食事制限はやめたほうが良い」と考えられています。食事制限によるストレスは体に良くないし、続かないと意味が無いからです。ただし具体的な方法は、患者さんの状態や性格を見た上でコミュニケーションを取りながら決められている感じです。患者自身が勝手に「これくらいならいいだろう」と判断するのは危険です。

最後に

もしもあなたが糖尿病治療が上手くいかずストレスが溜まっているのなら、一度この本を読んでみてはいかがでしょうか。

糖尿病は非常に怖い病気です。血液の中に潜む「多すぎる糖」は、体中に運ばれて行く先々で細胞を変質させ、沢山の合併症を引き起こします。そして、後に続く長い人生を、楽しみのない苦痛なものに塗り替えてしまうのです。